同じ日本の中でも、所変われば何とやらで、言葉や風習などは、地域によってかなり違う。そのため、青森の人と熊本の人では、話が通じないこともままある。だが、大工の世界では、青森の大工も熊本の大工も、共通の技術や作業手順を持っているので、1枚の板図さえあれば同じ家を建てられる。この時はじめて、私は、大工の世界には、かなり高いレベルで、全国的に統一された技術と認識があり、こうしたものを日本中の大工が共有しているのだということを知った。
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だから、東京の大工が書いた板図を見て青森の大工が柱を刻み、その柱を大阪に持っていって大阪の大工が家を組み立てるなどという芸当も、当たり前のことのようにできるのだ。もちろん、できあがった建物は、最初に東京の大工が思い描いたとおりのものになる。それだけではない。100年前の大工が描いた1枚の板図を見ながら、現代の大工がその家を再現できるのだ。これこそ、日本の伝統であり文化ではないか。たった1枚の板図で、どんな家でも建ち、日本中、どこに住む大工でも同じ家を建てられる。情報が氾濫する世の中で、必要最低限の情報を、これほどコンパクトに伝えることのできる技術が、その昔から日本にはあったのだということに、深く感動した。