質草は庶民の生活を映す鋭であり、それをたどることによって、まさに庶民の歴史そのものが見えてくるといってもいい。いまと違って物の種類も数量も、絶対的に少なかった戦前や戦後の物もない頃は、庶民が日常使用する、あらゆるものが質草となった。煮炊きに使う鍋や釜から若物、ふとん、道具、一個に至るまで、質入れができたのである。とくに衣類や道具類は、江戸時代のむかしから古着商、古道具商があったように、生活の貴重品として、質草には欠かせないものであった。だから、サラリーマンの背広やズボン、女性のワンピースや浴衣などは、昭和三十年代頃には質価の上位にランクされたのであり、背広などは、四十年代になっても質屋で預かってくれたはずである。そして、昭和四十年代になると、家電製品が質草の上位を占めるようになり、以後、家電製品は次々とヒット作を生み出し、それが中古ビジネス市場にも波及して、人気商品の常連となっていく。当初、質草として持ち込まれた家電製品は、テレビ、ステレオ、カセットテープレコーダー、ラジオ、洗濯機、冷蔵庫といった大型品が中心であった。クレジットが普及して、若い人たちが分割払いで次々に家電製品を購入したが、次第に支払いに行きづまり、質尾へ持ち込んで換金する、というパターンである。